執筆:小林明人
少年柔道の現場にて
こんにちは。いつも弊社メールマガジンをご覧いただき、誠にありがとうございます。
ハラスメントへの意識が高まる昨今。今回は少年柔道大会で起こりがちなハラスメントについてお伝えします。
応援で起こるハラスメント、題して「チヤリング ハラスメント–cheering harassment–(チヤハラ)」です。
◇少年柔道大会で
昨年末、毎年恒例となっている、我が所属チーム主催の少年柔道大会が開催されました。出場選手は約200名。
私はここ数年、審判長を務めています。
審判長の主な役割は「選手の安全対策」と「ルールの徹底」ですが、今回のようなローカルな大会では、会場運営や進行管理も担う必要があり、実際には大会全体を統括するポジションになります。
今大会では、多くの柔道大会で顕在化している、あるハラスメント問題に対して、一石を投じるべく、主催者として方針を打ち出すこととしました。

◇チヤハラ
「チヤリング ハラスメント(チヤハラ)」、これは私が考えた造語ですが、監督・コーチや観客など、自チームを応援する人たちが、審判の判定に大声で異議やクレームをぶつける行為のことです。
ルール上は禁止事項となっていますが、ローカルな大会では厳格に適用されていないのが実情です。
実は、多くの大会で審判員が最も負担に感じているのが、この「チヤハラ」。
具体的には、試合中に――
「今の一本だろう!」「それ、指導だろう!」
さらに集団で「えー、なんでだよ!」と声を浴びせ、判定を変えさせようと心理的圧力を審判員にかける行為です。

また、中には試合後に審判員に詰め寄って「あのジャッジはおかしい!」というケースもあります。試合終了後に勝敗の変更はありえませんので、こうなると、ただの腹いせです。
◇対策を決意したきっかけ
あらゆる大会で毎度、一部の審判員たちからの「もうやりたくない」という声を耳にします。理由を尋ねると、共通して“チヤハラ”が原因でした。
特に若い審判員は、精神的な苦痛から、その後の大会で本当に審判員をやらなくなってしまいます。そのようなことから、若い審判員が登場しては姿を消すという悪循環に陥り、老齢な方がいつまでも審判員を続けなければならないという事態を招いています。
そしてその被害者の中には、指導者となった私の教え子たちも。
「これはなんとかしなければならない」と強く感じ、柔道界に一石を投じるべく、自らの主催大会で問題提起の行動を起こした次第です。
◇プロスポーツとは違う
プロ野球などでは「ストライクだろ!」や「タッチアウトだろ!」といった野次が観客席から飛び交うのは日常的な光景です。とはいえ、プロの試合はショービジネスでもあり、演出や空気づくりとして成立している面があります。
しかし、アマチュアスポーツ、まして少年大会での野次やクレームは許容できません。
子どもたちが大人の振る舞いをそのままコピーし、将来的にクレーマー気質を助長してしまう危険性もあります。
実際に、そんな大人の態度を模倣したかのような子どもがいて、その姿を見かけるたびに、胸が痛み、将来が案じられます。
◇チヤハラが増殖するロジック
試合会場でチヤハラを行う人が一人現れると、それにつられて次々と。
そして彼らは他大会でも同じ振る舞いを繰り返し、負の連鎖となって増殖していきます。
さらに、こうした高圧的な態度は、パワハラの形へ変質しやすく、チーム内の雰囲気悪化、子どもたちや保護者の萎縮を招くことも少なくありません。
まさに勝利至上主義が招いた害悪で、これらが原因で、規模が著しく縮小しているチームも見受けられます。
柔道に限らず、このようなハラスメント体質のチームは今でも残念ながら存在しているのではないでしょうか。
◇チヤハラを防いだロジック
今大会では、「審判員のジャッジに対するクレームを一切禁止します。観客の皆様も応援中に判定への異議発言を行わないようお願いいたします。」これを明確に文書及び口頭でアナウンスしました。
その結果、理念に賛同してくれる協力者が増え、会場全体が自然とマナー向上へ向かい、チヤハラ防止が実現できただけではなく、スムーズな大会進行を行うことができました。
つまり、ルールとして明確にして、全体共有したことで、協力の輪が生まれ、一致協力できたというわけです。
そして、翌週開催された別の大会、私は一審判員として参加しましたが、チヤハラを目にすることはありませんでしたので、我がチームが投じた一石が効いたのではないかと自負しております。
◇本日のオススメ
“ハラスメントは、加害者となる人の身勝手から発生する”ということを、今回、対策を考える中で実感しました。
柔道で言えば、“自身のチームの勝利”にこだわる人々によって引き起こされてきた“チヤハラ”です。
「ジャッジへのクレームを一切禁止」と、要点を絞り明確に打ち出したことが、そういった身勝手を抑制することとなりました。
ハラスメント防止は「唱えるだけ」では効果が見込めません。被害者と加害者の両方を具体的に想像し、対策を明文化して共有することが何より重要ということを再認識した次第です。
また、「強者→弱者」だけでなく「弱者→強者」も起こり得るという視点も大切だということを忘れてはなりません。
~あとがき~
これからも、皆様のお役に立ちそうな気になることを掲載してまいりますので、どうぞお読みください。


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