執筆:小林明人

娘のレポートがおもしろかったので

大学の文系学部に通う私の娘。
ひょんなことから課題のレポートを見せてもらうことがありました。
なかなか面白い内容でしたので、その内容をご紹介させていただきます。
(もちろん本人の掲載許可は取ってあります。)


◇「程」ってなに?

公式な文章や、お店のお願いの張り紙などで
「○○です。ご理解の程よろしくお願いいたします。」
という文言を見たことはありませんか?

「ご理解よろしくお願いいたします。」でも意味は通じますが、なぜわざわざ「の程」という言葉をつけるのでしょうか。

「程」という文字をみると、「程度」「~くらい」という意味を連想するのではないでしょうか。

ということで、「程」の意味を辞書で引いてみました。

ほど【程】

  1. 物事・動作・状態の程度や段階。「身の―をわきまえる」
  2. 許される範囲内の程度。「ふざけるにも―がある」
  3. (「…のほど」の形で)断定を避け、表現をやわらげるのに用いる。「ご自愛の―を祈ります」

(参考:デジタル大辞泉)

以上の辞書の意味を踏まえると、「ご理解の程よろしくお願いいたします。」の「程」は、3の意味に当たるでしょう。

「ご理解よろしくお願いいたします。」という文に、「程」を加えることで、お願いを和らげる、つまり、少し遠回しなお願いになるということです。目上の人に対するお願いの文章や、自分のための動作をお願いする文章では、「程」を入れた方が、感じの良い文章になるかもしれませんね。

◇「少ない」以外の「ちょっと」の意味

皆さんは「ちょっと」という言葉をどのような場面で使いますか。
「あとちょっとだから頑張れ!」「ちょっとだけ残っているよ。」
など、数量の少ない様を表現する時に使うでしょう。

しかし、それだけでしょうか。
先日、私が従叔父と話していた所、ある話題があがりました。

従叔父が取引先のスタッフの中国人の方と、商品の在庫の話している際に、
「今ちょっと在庫ないですね。」
と言ったのですが、
「ちょっとあるの?」
と聞かれてしまい、困ったそうです。

 

この場合の「ちょっと」は少量であることを意味する「ちょっと」でしょうか。そうではないことがなんとなく分かると思います。

こちらも辞書で意味を調べてみました。

ちょっと【一寸/鳥渡】

  1. 物事の数量・程度や時間がわずかであるさま。すこし。「―昼寝をする」
  2. その行動が軽い気持ちで行われるさま。「―そこまで」
  3. かなりのものであるさま。けっこう。「―名の知れた作家」
  4. (多くあとに打消しの語を伴って用いる)簡単に判断することが不可能なさま、または、困難であるさま。「―お答えできません」

(デジタル大辞泉)

以上の意味を踏まえると、「今ちょっと在庫ないですね。」は、4の意味に該当するでしょう。
「簡単にはないとは言い切れないけれどない」という意味になるでしょうか。

簡単に判断できない様子を表すことで、「ない」ということを相手にはっきり突き付けすぎない効果もあるのかもしれません。

〈編集後記〉

分かっていそうできちんと意味を説明できなさそうな言葉についてまとめてみました。
きちんと理解した上で、言葉を使えるといいですね。


【本日のオススメ】

確かに、お取引先様への文書に使う「~~の程」は、このレポートに書かれている意味合いで使っていました。そして「ちょっと××」という言い方もよくしますし、耳にします。

このような類の言葉遣いは他にもたくさんあると思いますが、気になった時に深堀りしてみるのも面白いのではないでしょうか。

日本語ならではの言い回しを上手に使うことで、良質なコミュニケーションに繋がるものと考えます。

皆様の参考になれば幸いです。

~あとがき~

これからも、皆様のお役に立ちそうな気になることを掲載してまいりますので、どうぞお読み下さい。


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